1.日常清掃と定期清掃を別の行に分ける
最初に作るのは単価表ではなく、作業の一覧です。例えば床清掃でも、毎日の除塵と年数回の洗浄では、人員、機械、実施時間が違います。同じ面積を一つの単価にまとめる前に、仕様書の作業区分ごとに行を分けてください。
| 区分 | 数量として記録すること | 金額に入れる前の確認 |
|---|---|---|
| 日常清掃 | 部屋別面積、実施日数、巡回回数 | 開館日・休館日、最低配置人数、実施可能時間 |
| 定期清掃 | 床材・ガラス等の対象数量、年間回数 | 作業方法、機械、高所作業、休日実施 |
| 臨時・追加作業 | 指定された数量、発生時の扱い | 契約範囲に含むか、別途精算か |
| 付随業務 | 点検、写真、報告、鍵管理、引継ぎ | 担当者、所要時間、提出頻度 |
「延べ床面積」と「清掃対象面積」は同じとは限りません。対象外の部屋、立入りが制限される場所、移動距離も別に記録します。公告の添付資料だけで確定できない事項は、見積担当者の想像で埋めず、質問項目として残します。
2.面積・回数・配置条件から必要な人時を計算する
国交省の積算要領では、清掃面積や清掃回数などに歩掛りを掛けて労務数量を算定します。歩掛りは、一定量の作業に必要な労務量を表すものです。ただし、現場条件や採用する算定方法を確認せず、表の値だけを当てはめることは避けます。積算要領の第1編2.1・第2編第4章を確認する
編集部作成の架空例:金額を入れる前の作業量チェック
日常清掃を「2人・1日3時間・月22日・12か月」と仮定すると、年間の作業量は2×3×22×12=1,584人時です。さらに定期清掃を「2人・1回6時間・年4回」と仮定すると48人時となり、合計は1,632人時です。
この例は計算方法の説明です。実在案件の条件、標準的な配置、推奨する作業量を示すものではありません。休憩、休暇・欠勤時の代務、移動、報告、責任者の業務などは、実際の仕様と勤務計画に応じて別途確認します。
社内の積算表は「公式資料に書かれた数量」「自社が見込んだ作業時間」「確認待ち」を別列にすると、前提の違いを見つけやすくなります。面積から算出した労務量と、仕様書が指定する常駐・配置条件の両方を確認し、同じ作業時間を二重に加えないことも大切です。
3.人件費は参考単価の意味と適用時点を確認する
国交省の建築保全業務労務単価は、官庁施設の費用積算に用いる参考単価です。清掃会社の請負価格や、すべての清掃入札に共通する最低価格を示すものではありません。公開されている数値を使う場合は、対象年度、地域、職種、作業時間の前提を合わせます。
令和8年度資料には、日割基礎単価に時間外・休日・深夜の割増賃金、通常を超える作業の手当、事業主負担の法定福利費や研修費などの業務管理費、一般管理費等は含まれないと説明されています。参考単価の構成と留意事項を確認する
自社の見積もりでは、実際に採用・配置を見込む賃金と必要人数を基に、代務を確保できるかまで確認します。最低賃金は金額だけでなく発効日も見る必要があります。長期契約では途中の賃金変更を想定した収支も試算し、契約書案に価格変更の条件があるか確認してください。単価が上がれば契約額も自動で上がるとは限りません。厚生労働省の地域別最低賃金一覧
4.機材・法定福利費・管理費を漏らさず、重ねて計上しない
清掃に必要な費用は、現場の作業員へ支払う賃金だけではありません。国交省の積算基準は、人件費、物品費、現場を管理する費用、企業の運営に必要な費用などを分けています。この整理は、自社の見積もりで費目の漏れを探す手掛かりになります。積算基準の第2章・第3章を確認する
| 確認する費用 | 見落としやすい内容 |
|---|---|
| 物品・機械 | 薬剤、消耗品、清掃用具、機械の使用、運搬、保管 |
| 現場管理 | 責任者、事業主負担の法定福利費、採用・研修、安全管理、通信・交通、保険 |
| 本部経費・利益 | 事務・営業・管理業務、会社を維持する費用、履行に必要な利益 |
ここからは社内確認の実務例です。例えば「機材費」に運搬を含めたうえで、別の「交通費」に同じ運搬を入れると二重計上になります。反対に、発注者が機械を貸与すると読んでいたのに消耗品は受注者負担なら、薬剤等の原価が抜けます。各行に負担者と根拠ページを付け、費目間の境界を決めてください。
概念的には「必要労務量に応じた人件費+物品・機械等+現場管理+本部経費・利益」が税を加える前の見積価格です。指定の内訳様式や適用する積算方法がある場合は、それに従って費目を対応させます。一律の諸経費率や利益率をこの記事から導くことはできません。
5.月額・年額・契約総額と税区分を照合する
入札書へ転記する前に、金額の単位を見積書の上部へ明記します。月額での入札なのか、期間全体の総価なのか、作業ごとの単価なのかを公告と様式で照合してください。単価契約でも、予定数量を掛けた金額で入札する指定があり得るため、契約名だけで判断しません。
換算の架空例として、税抜月額30万円が12か月続けば税抜年額360万円、24か月続けば税抜総額720万円です。ただし、初期準備費や年数回の定期清掃費が月額に含まれない条件なら、この掛け算だけでは総額になりません。この数字は相場、実際の落札額、推奨価格ではありません。
比較用の表には「原文の金額」「税区分」「金額の単位」「対象期間」を残します。月額へ換算した参考値を作る場合も、原文を消さず別の列にします。過去の落札価格と自社見積もりの差を調べるときも、作業範囲と期間をそろえることが先です。
6.提出直前に数量と根拠をもう一度確認する
金額が決まったら、作成者以外の担当者が仕様書と見積書を照合します。確認する順番を固定すると、単純な転記ミスと前提条件の抜けを分けて見つけられます。
- 最新の仕様書・訂正・質問回答を反映しているか。
- 清掃対象、作業回数、契約月数、必要配置が一致しているか。
- 日常・定期・臨時・報告業務の計上が重複していないか。
- 物品や機械、光熱水費等の負担者を取り違えていないか。
- 内訳の合計、税区分、入札書の金額単位が一致しているか。
- 必要な内訳書、提出形式、提出期限を満たしているか。
質問が残る案件は、価格で吸収しようとする前に、発注機関の指定する方法と期限で確認します。落札後に履行できる人員と原価がそろうかを社内で判断することが、見積もりの最終段階です。
FAQ
よくある質問
国交省の労務単価を、そのまま入札額に使えますか?
そのまま請負価格にはできません。対象となる年度・地域・職種・作業条件を確認し、数量と、参考単価に含まれていない管理費等を区別する必要があります。案件が指定する算定・提出方法も確認してください。
面積が同じなら、他の施設の落札価格を使えますか?
面積だけでは比較できません。床材、清掃回数、時間帯、配置条件、消耗品の負担、契約期間などをそろえて確認します。過去の価格は、自社原価を置き換えるものではありません。
複数年契約の人件費は、初年度の金額だけで計算してよいですか?
契約期間全体で履行できるか確認します。賃金や物品費が変わる場合の収支を試算し、契約書案の価格変更条件を確認してください。契約額が自動で変更されると見込むことは避けます。
OFFICIAL SOURCES
参考にした公式資料
以下の一次資料をもとに編集部が整理しています。比較表・チェック表は編集部作成の参考資料です。資料ごとの確認日を示しています。参加条件や募集状態は最新の公式原文でご確認ください。
- 国土交通省|建築保全業務積算基準、同要領(掲載版・改定情報)確認日:2026-10-25
- 国土交通省|建築保全業務積算基準 令和5年版(第2章・第3章)確認日:2026-10-25
- 国土交通省|建築保全業務積算要領 令和5年版・2023年11月8日改定(第1編2.1・第2編第4章)確認日:2026-10-25
- 国土交通省|令和8年度建築保全業務労務単価(構成・留意事項)確認日:2026-10-25
- 厚生労働省|地域別最低賃金の全国一覧(金額・発効日)確認日:2026-10-25
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